大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成6年(う)1470号 判決

所論は,要するに,原判決は,原判示第2の2の適合実包と共に保管するけん銃の所持について,被告人には自首が成立しないと判断したが,被告人は,覚せい剤取締法違反の容疑で捜索を受けた際に,右被疑事件と関係のないけん銃を自らの意思で提出したもので,右けん銃の所持は「未だ官に発覚せざる」犯行であり,けん銃所持について取調べを受けている際の提出(自自)でもないから,被告人には自首が成立するというべきであり,この点で,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の適用の誤りがある,というのである。

しかし,記録及び証拠物並びに被告人の当審公判廷における供述によれば,平成6年7月4日午前8時55分から,被告人に対する覚せい剤取締法違反被疑事件について,捜索差押許可状に基づき,被告人の立ち会いのもとで被告人方の捜索が開始され,午前9時10分,被告人方1階の6畳間和室押入れ内のボストンバッグからビニール袋入りの覚せい剤(原判示第2の1の覚せい剤)が発見され,午前9時15分,被告人は右覚せい剤の所持により現行犯逮捕されたこと,さらに,右捜索差押許可状に基づく捜索が継続され,午前9時30分ころ,佐藤肇巡査部長が2階6畳間和室の捜索を始めてしばらくしてから,立ち会っていた被告人は,同巡査部長に対し,「もう観念したよ。けん銃もあるから出すよ。」と言って,同室押入れの上にある天袋の引き戸を開けて,その中のセカンドバッグを指差したこと,同巡査部長は,セカンドバッグを取り出し,その中から原判示第2の2のけん銃と実包を発見し,被告人に本物であることを確認するなどした上,被告人を右けん銃等の所持(けん銃等加重所持罪)により現行犯逮捕したこと,被告人がけん銃の所持と所在を明らかにしたのは,捜索の開始後に捜査官の一人から「チャカぐらいあるんだろう。出せよ。」と言われていた上,けん銃を簡単に見つかるところに隠していたので,見つかるのは時間の問題だと思ったからであったこと,なお,右天袋内からは,多数の注射器と注射針も発見,押収されており,右けん銃押収後,2階4畳半間のクロゼットの上段からは,原判示第2の3のペンシル型銃が発見されたこと,以上の事実が認められる。右の事実によれば,被告人が原判示第2の2のけん銃と実包を所持していることは,まだ捜査機関に発覚していなかったものの,捜索の実施によって,右けん銃が発見されることは必至の状況にあり,その状況下で,被告人は,被告人がけん銃を所持しているかも知れないと考えた捜査官から,けん銃を所持しているのであれば出すようにと促されるとともに,いずれ発見されることは間違いないと観念した結果,やむなく右けん銃を提出することを決意し,その所在を明らかにしたのであるから,被告人は,自ら進んでけん銃の所持という自己の犯罪事実を申告したものとは認められず,そうすると,被告人の行為は銃砲刀剣類所持等取締法31条の4ないし刑法42条1項の自首のいずれにも当たらないというべきである。所論指摘の最高裁判例は,事案を異にし,本件に適切でない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!